時は20XX年、アジアは経済協力体制を敷きAC=ASIA COMMUNITYとしてヨーロッパに次いで世界2大共同体を形成していた。
20世紀後半に世界を制した2大国家は衰弱し当時代理戦争によるテロリズムが国際問題として浮上していたが、現在では国際協定の中で、物理的な破戒や殺戮と言ったテロリズムは影を潜め、ヒューマニスト達が夢に描いた世界平和が訪れているかの様に見えた。
しかし、国間の利害関係から発生する情報の摩擦は、大きく表面化することは無い物の、水面下では激しく攻防を繰り返しているのであった。
ネットワークは、全ての社会、全ての個人に接続し、IPV6による128ビット長のアドレスによって個人までもが管理下に置かれていた。
「全ての情報は、ネットワークにあり」
大手IT企業会長ベル・ゴイソ氏による大規模なネットワーク改革は、21世紀中頃から提唱され、当時インターネットと呼ばれていたネットワークは、国家、企業の思惑を乗せて再構築されていったのだ。
個人の持つ端末は、ICタグ化され旧世代の人間にはリストバンドとし、新世代の人間には体内に組み込まれ、DNA単位で個人情報を認識するのだ。個人情報の背番号管理は、20世紀前半に考えられていたデメリットばかりでは無かった、医療や犯罪抑止の分野では目覚ましい成果を得ることが出来、テレビなどのメディアが提唱したある時期のムーブメントによって一気に世論を巻き込んで個人のICタグ化が推進されて行ったのだ。
白いICタグリストバンドを掲げにこやかに微笑むCGタレント
「世界の人が、全ての人が幸せになるその日まで、僕たちは諦めません!」
今思えばそれは当局のプロパガンダだったのかも知れない。
一見平和そうに見える世界、しかし戦争の方法は人の殺戮という形から、情報の消去と形を変え、現代の戦術は利害関係国へのクラッキングと有力者の個人情報消去という新しい侵略方法に変わったのだ。
個人情報の削除は、個人の国家からの抹殺であり、死を意味するのだ。全ての存在がデータとして存在し、データの無い者はその存在すら認識されないのだから。
現代では人の容姿、それ自体は意味を成さない、全ての人は仮想空間でアバターという形で存在し、生活し、労働しているのだ。
データの無い人間、それは存在していないのだから。